レポート - REPORT

2003年9月某日 夜

東京から電車で走ること1時間ちょっと、窓を開けるとかすかに納豆の奥ゆかしい香りが鼻腔をつく。

そこはもう水戸であった。(ウソです。水戸の方ごめんなさい)

駅に降り立つと、夜を持て余した高校生の大群が騒いでいる。

その凄まじいほどの熱気に一瞬呑まれ、大人たちはどこに行ったのかとしばし思いをめぐらす。

納豆の豆がネバネバと互いを求めるごとく、人もまた誰かを求めてネバネバと粘質の糸を放つ。

それはひとつの摂理であるに違いない。

しかし彼らは明日この水戸で映画祭が開かれることを、そしてその映画祭のコンペティション部門で「OBSESSION」などという不可解な題名の16mm映画が上映されることなど、全く知らないに違いない、と疲れ気味だった僕はひとり呟き会場へ向かったのだった。

映画祭会場となる水戸芸術館に着くと、映画祭スタッフとおぼしき方々が忙しげに働いている。

「ああ、映画祭はたしかに催されるのだ」と人知れず安堵して、様子を伺いつつ挨拶をする。

そのまま速やかに会議室へ連れて行かれ待たされること数十分。ノミネート監督が全員集まったところで明日の段取りのチェック、その後は当然のごとく皆で飲みに出かける。

未明まで飲み続け、本日は終了。いよいよ明日は映画祭本番である。

2004年9月某日

映画祭当日。会場に長蛇の列が出来ている。

列はクネクネと曲がりまるで水戸の高級納豆のようにいつまでも途切れることを知らないようである。

(納豆を連発しているくせに、水戸納豆は食べずじまいだった・・・・・・)

しかも若い女の子が多い。「え、なんで?」と普通に驚く。今まで参加した映画祭でもここまで一般のお客さんの割合が多いものは無かった。映画祭というと関係者の方が多いことも多々ある。

もしかしたら昨日、駅前で騒いでいた高校生もいるのかもしれない。いたら嬉しいな、などと思いつつ会場に入るとそこはまるでイギリスのシェ-クスピア劇場のように3階まで客席があるではないか。

すごいぞ、水戸。水戸というか水戸芸術館だけど。

舞台挨拶があるからなるべくすぐ出られる場所にと言われた為、3階に駆け上りたい衝動をおさえ1階の末席にて上映を見る。

観客の反応がすこぶる良い。僕の作品がというわけではなく、全作品の上映を通して純粋に映画を楽しもうという気持ちが伝わってくる。もちろんつまらないシーンでは退屈な雰囲気が漂うが、笑えるシーンでは気持ちいいほどの反応がある。関係者にありがちな穿った鑑賞の仕方ではなく、積極的に面白い作品に出会いたいと気持ちが感じられて嬉しくなってくる。

で、僕の「OBSESSION」上映後に何人かの監督と一緒に舞台挨拶に上がる。

それぞれ監督の隣にはキャストやスタッフがいて順番に挨拶をしていく。そして僕の隣にはいつも作品を手伝ってもらっている福田が立っている。福田は昨日から行動をともにしていて「OBSESSION」のスタッフということで打合せから、映写チェック、飲みにまで一緒に出かけホテルにも狭い部屋で一緒に泊まったのだが、実は「OBSESSION」のスタッフではない。

僕の作品では「OBSESSION」の次の作品から参加して貰い始めたので、厳密に言うとこの場で舞台上に上がっているのはオカシイのだが(というか駄目なのだが)面白いからいいじゃんということで無理やり上げたのである。

当然司会者から「そちらの方はどなたですか?」の聞かれることになるので、僕は「車輌の福田です」と紹介しようと思っていたのだが、結局は「制作の福田です」と普通に答えることになってしまった。

質問されたときに福田の顔を見たら、「制作で」と目が泳いだ福田が小さく呟いたからである。

そんなこんなで審査発表。

またしても受賞ナラズに終わる。でもグランプリは学校の先輩にあたる沖田さんが獲ったのでそれほど悔しくは無い。(後日、なぜか打ち上げにも参加させてもらったし)

次こそ水戸のギャルたちから惜しみない喝采を受けるために最高の映画を作ってまた来よう、と決意を新たにして映画祭は幕を閉じた。

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