レポート - REPORT

僕はその日現場初日だった。

予定にはなかったのだが、現場で必要な物が出たので急遽会社に戻った。

そんな時、上司から篠田氏の訃報を聞いた。驚きだった。ただただ驚きだった。

僕が初めて篠田氏の撮影作品に出会ったのは、ふとしたきっかけで観た岩井俊二監督作品『LOVE LETTER』だった。

雪の上に寝そべる中山美穂演じる藤井樹のclose-up、そして起き上がり雪原の丘を下っていく樹をクレーンの乗ったキャメラがゆっくりと追いかけていく。その画面の心地よい揺れ、映像美。

そんなファーストシーンで僕は篠田氏の撮影と出会った。

シネマスコープという横長で特異なフレームを余すことなく利用し、でも決して窮屈にはせず中身のある画にしていく。

そうして出来上がった画は見た瞬間に観客をその作品の中へと引き込んでいく。

手持ち撮影のすーっと心に馴染んでくる画の揺れ。

光とフィルターを独創的に用いた柔らかく美しい画調。

一瞬でその紡ぎ出される抒情詩のような世界の虜になった。

篠田氏の撮影といえば、手持ち・イージーリグもしくはステディーカムを用いていると思われるハンディーキャメラ。

そして白く明るい部分、いわゆる≪ハイ≫の部分を美しく飛ばしたあの画調。

ライティングを見事にコントロールし、作品に合わせておそらくプロミスト・ローコントラスト・フォグ等のフィルターを用いてその≪ハイ≫の飛びを変化させていたのだと思う。

この2点は氏のキャメラを考える上で切り離せない部分であるが、僕は何といってもあのフレームの切り取り方が氏の一番の凄さだと思う。篠田氏のフレームは、キャメラはキャメラとしてきちんと主張しているにもかかわらず、常に役者の呼吸を的確に捉えているのである。

ここでいう≪役者の呼吸≫とは<俳優の芝居を的確に捉える>事とは違う。

キャメラの目の前にいる俳優の演技を確実に写しているだけではなく、俳優が作品中での【役】を演じ【役者】となっているその息づかいを、まなざしを切り取ることができるキャメラマンだったと思う。

これは初期の氏の撮影作品『ラブホテル』(相米慎二監督作品)からずっと見られるものである。

そんな撮影をすることが出来る、数少ないキャメラマンの一人が鬼籍に入られてしまった。

とても残念でならない。

もっともっと活躍して素晴らしい作品を撮影して頂きたかった。

ご冥福をお祈り申し上げます。

合掌

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